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レッスン8回で地上12階へ ── 劇団ひとりのハイライン

出張講習はじめました|ROLLING RESEARCH

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ハイラインの落下。リーシュで吊られた状態で振られる瞬間

最近、20m前後の短いラインを張り、「ハイライン体験」として提供する場所を見かけるようになりました。ハイラインの認知が広がってきた証拠でもあり、それ自体は嬉しいことです。ただ、短いハイラインには、経験者なら誰もが知っている物理的な危険があります。この記事では、なぜ短いハイラインが危険なのかを、できるだけ分かりやすく説明します。この記事は、何も知らない状態でハイラインを体験しようとする初心者を守るためのものです。読んだ人が、自分で判断できるようになることを目的にしています。

ハイラインで落ちると、何が起きるか

ハイラインでは、ハーネスに接続したリーシュ(命綱)をラインに繋いで歩きます。バランスを崩して落ちると、身体はまず真下に落ち、リーシュがピンと張った瞬間に止まります。落ち方によっては、そこから前後左右に大きく振られます。

このとき、落下のエネルギーはラインが伸びて、たわむことで吸収されます。長いラインは大きく伸びるので、バンジージャンプのように身体をゆっくり受け止めてくれます。落ちても「ふわっ」と止まる。だから経験者は、長いラインで落ちることを怖がりません。

短いラインでは、身体への衝撃が強くなる

短いラインでは、これが逆になります。理由は2つです。

1. 伸びる量が少ない

ウェビングは長さに比例して伸びます。同じウェビングなら、10mのラインは40mのラインの4分の1しか伸びません。バンジージャンプのゴムが極端に短くなったところを想像してください。身体を受け止める距離がないので、リーシュが張った瞬間に「バン」と急停止し、衝撃がそのまま身体に来ます。走っている車がブレーキではなく壁にぶつかって止まるような、交通事故に近い衝撃です。

2. 振られる動きが急になる

短いラインはたわみが小さく、アンカーも近いため、落ちた後の振られ方が短く、速く、鋭くなります。

熟練したプロであれば、短いラインでも身体をコントロールして、衝撃を逃がすきれいな落ち方ができます。しかし初心者には、それができません。長いラインなら、コントロールできない体勢で落ちてもラインが受け止めてくれます。短いラインでは、その体勢のまま「バン」と止まる。首をひねってむち打ちになったり、腰を痛めたりするのは、この瞬間です。実際に、短いラインに乗って骨折したり腰を痛めたりする人が多発しているのが現状です。

誤解しないでほしいのは、長いラインなら、初心者が落ちても落下の衝撃による怪我のリスクを極めて小さくできる、ということです。衝撃は柔らかく、落ちること自体が楽しいくらいです。短いラインでは、その「落ちること」がそのまま怪我のリスクになります。同じハイラインという名前でも、まったく別のものだと思ってください。

だからこそ、本当に上手い熟練のハイライナーほど、短いラインには絶対に乗りたがりません。何が起きるかを知っているからです。

「プロは短いラインでも設置しているのでは」という疑問

Slackline Researchも、テレビ番組やイベントで短いラインを設置することがあります。それを見て、短くても問題ないのではと思う人がいるかもしれません。

答えは、条件がまったく違う、です。イッテQでイモトさんが挑戦したラインでは、命綱を上に張った別のラインから吊るす特殊な方式を使い、落下距離を限りなく小さくしました。劇団ひとりさんが挑戦した30mのラインでは、バンジーを組み込んで落下の衝撃を柔らかくしました。

乗ったのは、イモトさんも劇団ひとりさんも初心者です。ただし設置したのは、上に書いた問題をすべて分かった上で、それを打ち消す仕組みを現場ごとに設計し、その場で安全を管理したプロです。初心者がハーネスとリーシュだけで短いラインに乗る「体験」とは、別のものです。

Slackline Researchの基準:25m未満は推奨しない

Slackline Researchでは、25m未満のハイラインを推奨していません。理想は40m以上です。

高さについては、ISA(国際スラックライン協会)が「ラインの長さの1/3+3m以上」を目安としています。20mのラインなら約10m、40mなら約16mです(バックアップが適切な長さで、ポリエステルまたはダイニーマなどの低伸縮素材であることが前提)。

この数字に法的な根拠はありません。国内にも海外にも、ハイラインの法的基準はまだ存在しないからです。日本でハイラインを15年以上続け、日本記録を含む数多くのラインを張り、150名以上の初心者を指導してきた経験から出した数字です。

体験に参加する前に、確認してほしい5つのこと

ハイライン体験を提供している場所に行く前に、確認してほしいことが5つあります。1と2は数字で判断できます。3から5は、主催者に聞いてみてください。

1. 最初に乗るラインの長さは25m以上か
ハイラインの安全システムをまだ分かっていない初心者は、25m未満のラインには乗らないことを強くおすすめします。初心者は落ち方をコントロールできず、危険な体勢で落ちることがあります。短いラインでは、それが致命的なダメージになる可能性があります。25m未満のラインに乗るのは、知識をつけて、自分でそのラインに乗っていいと判断できるようになってからです。
2. 十分な高さがあるか
高さの目安は、ラインの長さの1/3+3m以上が国際的な基準です。20mのラインなら約10m、40mなら約16mです。(バックアップが適切な長さで、ポリエステルまたはダイニーマなどの低伸縮素材であることが前提)
3. 「落ちて戻れなくなったとき、どうやってレスキューしてもらえますか?」と聞いてみる
ハーネスで宙吊りのまま動けなくなると、意識を失う危険があります。すぐに助けてもらえる準備があるか、説明を聞いて確認してください。
4. 「先に落ちて見せてもらえますか?」とお願いしてみる
設置した人が、自分のラインで落ちて見せてくれるかどうか。実際にそのラインで落ちる様子を見て、本当に安全なラインなのかを確認してください。
5. 「乗る前に事前講習はありますか?」と聞いてみる
ハーネスとリーシュの使い方、落ち方、落ちた後にどう戻るか。きちんとした場所なら、必ず説明があります。疑問はここで解消してもらいましょう。

この5つで、安全が保証されるわけではありません。説明を聞いても疑問や不安が残る場合は、参加を見送ることも大切です。

他にも注意しなければならないことはたくさんあります。詳しくはハイライン教科書(ハイライン入門講座)をご確認ください。安全にハイラインを始められる全国の拠点についてはハイライン入門ガイドをご覧ください。

なぜ、これを書くのか

ハイラインは、日本ではまだ小さな世界です。全国の拠点で、仲間同士が命を預け合いながら、少しずつ広げてきました。ここまで来るのに、長い時間がかかっています。

一番嫌なのは、短くて危険なラインに乗った人が「これがハイラインだ」と思ってしまうことです。むち打ちになるような落下を経験して、ハイラインは怖いだけのものだと思われる。そして事故が一つ起きれば、安全に張られたラインも、経験を積んできたリガーも、まとめて「危険なもの」として否定される。それが一番怖い。

だから、知識のない人が短いラインに乗せられる前に、判断できる材料を置いておきたい。この記事は、そのために書きました。

よくある質問

短いハイラインはなぜ危険なのですか?

ウェビングは長さに比例して伸びるため、短いラインは落下のエネルギーを吸収できず、身体への衝撃が強くなります。振られる動きも短く鋭くなり、落ち方をコントロールできない初心者は、首をひねってむち打ちになったり、腰を痛めたりしやすくなります。実際に、短いラインで骨折や腰の怪我が多発しています。

ハイラインは何m以上あれば安全ですか?

Slackline Researchでは25m未満のハイラインを推奨していません。理想は40m以上です。高さは、ISA(国際スラックライン協会)が「ラインの長さの1/3+3m以上」を目安としています(バックアップが適切な長さで、ポリエステルまたはダイニーマなどの低伸縮素材であることが前提)。ただし長さと高さだけで安全が決まるわけではなく、レスキュー体制、設置者の姿勢、事前講習の有無などをあわせて確認してください。

テレビで短いハイラインを見ましたが、大丈夫なのですか?

テレビ番組やイベントでの設置は、落下時に何が起きるかを分かった上で、それを打ち消す仕組みを現場ごとに設計し、プロがその場で安全を管理する特別なケースです。命綱を上のラインから吊るす方式や、バンジーを組み込んだ設置など、方法は現場ごとに違います。初心者向けの一般的な体験とは条件が異なります。

ハイライン体験に参加する前に何を確認すればいいですか?

まず、最初に乗るラインの長さが25m以上か、十分な高さがあるか(ラインの長さの1/3+3m以上が目安)。この2つは数字で判断できます。そのうえで、落ちて戻れなくなったときのレスキュー方法、設置した人が先に落ちて見せてくれるか、乗る前の事前講習の有無を主催者に聞いてみてください。この5つで安全が保証されるわけではありませんが、説明を聞いても疑問や不安が残る場合は、参加を見送ることも大切です。

Author

大杉徹 Slackline Research代表 スラックラインワールドカップ優勝のプロスラックライナー
大杉 徹(Slackline Research)

日本人初のスラックライン・ワールドカップチャンピオン。ハイライン入門講座を監修、受講生150名以上。ハイラインフリースタイルの普及と、安全で高性能なギアの開発・提案を行っています。

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