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スラックラインのバックアップ完全ガイド|実験結果と安全な方法

トリックラインやロングラインで「バックアップは本当に機能するのか?」を、公開実験と研究の結果をもとに整理。安全な取り方・避けるべきやり方・推奨ギアまで解説します。

なぜバックアップが必要か?

スラックラインでは、ウェビング・ラチェット・アンカーなどが破断するリスクがあります。特にテンションの高いトリックラインやロングラインでは、 破断時に金属パーツが飛び出すなど重大事故につながるおそれがあります。バックアップは命を守るための必須装備です。

実験①:HowNOT2「We CUT Tricklines – do backups work?」

海外チャンネル HowNOT2 は、トリックラインのラチェット破損時にバックアップが機能するかを公開実験で検証しました。 ▶︎ 実験映像を見る(YouTube)

テスト結果の要点

  • バックアップなし: ラチェットがロケットのように飛び出し、致命的に危険。
  • パラコード(細いコード): 即破断。バックアップとしては全く機能せず。
  • Slackline Industries のバックアップ: ウェビングが破断し、ラチェットは一部飛び出した。
  • Gibbon のコードレット+クローブヒッチ: ラチェット保持はできたが、コードレットは一度の衝撃で使用不能に。

負荷測定(テンションメーター)

初期テンション9.3 kN → 切断時のピーク衝撃荷重は 10.7 kNに達しました。
緩め設定でも8.9 kNが計測され、バックアップには初期値を上回る衝撃がかかることが分かります。

実験②:ロングライン破断時の高い衝撃

過去の公開実験では、ロングラインは破断時の衝撃が大きくなりやすいことが示されています。 たとえば、長さ80 m・テンション8 kNで設置されたロングラインが破断した際に、 25 kN級のピークが観測されたという報告があります。

伸縮率・長さ・素材(ナイロン/ポリエステル等)・運用テンションによって結果は大きく異なりますが、長いラインほど蓄えるエネルギーが大きく、 破断時に高い衝撃となる傾向があります。

実験③:Sayar Kuchenski(2013)アンカー片側破断シミュレーション

2013年の研究では、設置者が「アンカー片側の破断」を模擬し、バックアップやアンカーの延長量(=緩み)の違いによる 残存アンカーへのショックを計測しました。

  • 延長が大きく、ラインのテンションが完全に抜け切る場合: 残存アンカーへの衝撃はごく小さい。
  • 延長が少しだけ(中途半端)な場合: ラインに張力が残ったままキャッチされ、大きなショックが発生。

結論: バックアップやアンカー延長は「ゼロ」か「大きく緩ませるか」の二択が安全で、中途半端な緩みは危険です。
※現実には完全イコライズ(延長ゼロ)を実現するのは難しいため、設置環境に応じて意図的に緩ませるか、あるいは強力な二重バックアップで備える判断が重要です。

参考: Highline Shockload Simulation(Sayar Kuchenski, 2013, Balance Community)

筆者の経験談:バックアップがなかった時代

トリックライン黎明期の2009年頃、当時はバックアップの概念すらなく、私自身もラチェットをそのまま使用していました。 何度もラチェットが飛んできて危ない目に遭ったことがあり、今思えばゾッとします。

当時の失敗や危険な体験があったからこそ、いま「バックアップは絶対に必要」だと強く感じています。

バックアップ不足による実際の事故例

実際に、トリックラインやロングラインでバックアップが適切に行われず、死亡事故につながったケースも報告されています。 特に高テンション・長距離ラインでは、破断時に金属パーツが高速で飛び、プレイヤー本人や周囲の人を直撃する危険性があります。

私自身の経験と、こうした事故例からも、「バックアップは絶対に省略してはいけない」という教訓が明確です。

安全なバックアップの取り方(実務指針)

基本方針

  • 取り付け位置: ラチェットやアンカーの最も強い部分(例:ボルト部・堅牢な接続部)に通す。
  • 禁物: 細いパラコードや低強度ウェビングはバックアップとして機能しない。使用しない。
  • 二重化: 強力なロープ/スリングで二重バックアップにする(ウェビングテール+ロープ、ロープ+ラウンドスリング等)。
  • 緩ませ戦略の注意: 緩みを入れると衝撃は下がるが、金属部の移動距離が増えプレイヤーへ当たるリスクが上がる。現場の障害物・高さを踏まえて総合判断。

おすすめ構成(例)

  • ① ウェビングテールを活用して一次バックアップ。
  • ② 9 mmクラスのスタティックロープで二次バックアップ。
  • ③ トリックライン等の高テンション系: ラウンドスリングを併用して冗長化。

推奨バックアップ用ギア

※バックアップは鋭利なエッジを避けた位置に確実に設置してください。キャッチ後に使用を継続せず、状態に応じて交換を検討しましょう。

要点:(1)細いコードは使わない、(2)取り付けは最強部へ、(3)原則二重化、(4)中途半端な緩みは危険。
条件により最適解は変わるため、現場の高さ・障害物・素材・テンションを踏まえて設計し、必要なら専門家のレビューを受けましょう。
▶︎ 参考:HowNOT2 実験動画

この記事を書いた人

大杉徹プロフィール写真

大杉 徹(おおすぎ とおる)

日本人初のスラックライン・ワールドカップチャンピオン。
Slackline Research代表として、国内外でパフォーマンスや指導、ギアの普及に尽力。

メディア出演歴
『世界の果てまでイッテQ!』、『ジャンクスポーツ』、『スゴ動画超人GP』、
『キスマイ超BUSAIKU』、『中居のミになる図書館』、『ピラミッドダービー』、
雑誌『TARZAN(ターザン)』No.717 など多数。
主な実績・役職
・スラックラインリサーチ代表
・King of Slackline 2010 優勝
・Slackline World Cup 2013 優勝
アンバサダー
・Vivobarefoot

▶ 詳しいプロフィールを見る

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