今、世界のスラックラインのトレンドに、トリックラインとハイラインの要素を併せ持つ「ハイラインフリースタイル」というものがある。
ハイラインフリースタイルとは、長さ50〜80m、高さ15m以上の高所でトリックを楽しむ遊びです。基本的に1インチ(2.5cm)幅のナイロンウェビングが使用されます。
トリックラインの基本的なトリック要素に加え、ラインの下を回転するバリエーションや、振幅が大きい為、その間にいくつもの動きの要素を入れる事ができます。その為、トリックラインより更に多様な動きが可能になります。しかし、命綱がついている為、それが絡まらない様にトリック、コンボを構成する必要があります。
Highline Freestyle
ハイラインの安全な設置が確立されていく中で「いくら落ちても安全」と分かってきた2015年頃からチューリヒでは、Slacktivityのサミュエル、タイメン、ミュンヘンではルーカス、フリーディ彼らによって始められました。2017年頃にはいくつかの基礎的なトリックが確立されていきました。
そしてスペイン在住のイアンアイゼンバーグが率いるバウンスカルトというチームを中心に2020年頃を境に指数関数的にトリックが増えていきました。2021年にイタリアのハイラインフェスCCHFで初めてフリースタイルの大会が開催されました。
世界のフリースタイル愛好家が交流する、クローズドのフリースタイルグループ(現在3000人)があるのですが、発言力の強いのは今フリースタイル界を引っ張っているバウンスカルト。彼らは多くの技を生み出しているだけでなく、CCHFでの大会やパンデミックオープンというオンラインコンテストを開催している。
※補足:このフリースタイルのグループには大きく分けて3つのタイプがいる。①フリースタイルだけしている人、②トリックラインだけしている人③両方している人がいる。バランスカルトはフリースタイルだけしている人が多く、トリックラインの歴史を知らない人達である。
Bounce kult
バウンスカルトの活動は素晴らしいと思う反面、このままでは危険だとおもった。なぜなら彼らの主催する大会は採点方式の大会。この採点方式は良い結果を生まないという事は、トリックラインの10年以上歴史が既に証明しているのだが。それを彼らは知らないのだ。
技の難易度に点数をつけ、コンボやスタイルに加点をするシステム。これはルール内で戦うにはもちろん公平だ。しかし、ルールや点数に縛られる事で、選手(パフォーマー)のスタイルは死ぬ。世界中で10年間以上、トリックラインの大会では様々な採点方式を試したが全て機能しなかった。そして、最終的にメディア映えや利権によって歪みトリックラインは汚され、死んだ。これが世界の認識。
結果、トリックライン大会が残したのは大会の数字に翻弄され、スラックラインをやめていく選手と、スラックライン=競技といういう大衆への間違ったイメージの定着。大会のもつ力は強力で、スラックライン界全体に悪影響を及ぼす事があるのだ。
より複雑なフリースタイルで、それが機能するはずがない。私はフリースタイルもこの歴史を繰り返すと思った。
この事に気づいている人は多くいるが、フリースタイル界ではバウンスカルトの発言力が強く、また攻撃的な一面もあり、間違っていてもそこに反論できる人がいないのが現状。そこにふれるのはタブーかの様な空気。誰かが伝えないといけないと思い、私がこの事をフリースタイルグループにスレッドを立てて意見を述べた。
予想通り、バウンスカルト軍団から、私の意見に猛反論。
反論内容が、
「俺たちの採点方法は選手達によって点数が決められている!」
「トライアンドエラーで常に改善していく!」
「色んな採点方法があったら良い。」
「CCHFで1度大会をやった実績がある!」
「トリックラインとは違う!」
などだった。
色々と話しを聞いていったが、どれも10年前のトリックラインの考え方そのものだった。特に新しい試みはない。彼らはフリースタイルの最前線にいるが、歴史を知らないし経験が浅すぎる…。
終いには彼らは私に「行動しないものは文句しかいわない!お前は何をしている?」と言い出してきたので、
「私は、トリックラインの技を多く生み出してきた。10年以上世界中の大会に出場しているし、ワールドカップチャンピオンの経験もある。いくつも大会の開催に関わってきている。スラックラインに関する多くの教材をつくり、連盟の役員としても貢献している。日本で多くのイベントや、スラックライン教室にも行っている。Slacktivityの日本総代理店もやっていてる。今年、6月にフリースタイルの大会も開催するけどなにか?」
と、僕の嫌いな肩書きを並べて返信してやると、スレッドじゃなく、ダイレクトメッセージで謝ってくるという…。w
その辺を皮切りに、私の意見に賛同するものが加勢してくれ、ようやく議論になってくれた。アメリカのジャスティンや世界スラックライン連盟の役員など多くの人から、お前に100%賛同している!よく言ってくれた、本当に感謝している!とメッセージを多くもらった。しかし、どんだけ言いにくかったんだろう...。
私達がトリックラインで培ってきた経験が必ず正しいわけではないが、参考にしてもらえたらと思う。それによって、より良いフリースタイル、スラックラインの未来につながればと。もちろんトリックラインも。
以下が私の大会に対する意見です。
点数評価式の大会は一歩間違えると、そのシーンだけでなく、スラックライン全体のイメージを壊す。
メリットは、
1.技の限界を押し上げる
2.楽しい
3.人々との交流
4.認知度があがる
デメリットは、
1. 本来の目的を見失う。参加者は、楽しむことを忘れ、勝つ事を目的としてしまう。(これが1番危険なポイント)
2.点数、ルールに囚われる事で、スタイル、オリジナリティは失われる。
3.競技を認知、普及目的に使用してしまうとイメージ固定化につながる。例えば、日本ではスラックライン=トリックラインとなり、ハードルの高い遊びという誤解につながる。
4.参加者の性格が攻撃的になる。
これらの性質を踏まえた上で大会を行うべきだと思う。
個人的に、大会は好きではない。競技が美化され過ぎているこの世の中も嫌い。
けど、必要性もわかる。
なので大会をするなら、コンセプトは人々を魅了する大会で。
システムはトーナメント制が良い。
1.トーナメント制は、お互いのポテンシャルを引き出す。
2.そして、ジャッジもシンプル。"どちらのパフォーマンスをもっと見たいか?"
"どちらが”かっこ良いか?"そして勝者は、次のラウンドへ進む。
ジャッジも専門家である必要性がないと思う。なぜなら人々の心を掴むパフォーマンスをするべきだから。パフォーマンスは、創造性、難易度、多様性、高さ、美しさ、表現力、そして、人間性。人間の心は数字で計測出来ない。このシステムの面白さは、基準は人々の心の中にあり、自動的にアップデートされる事。点数システムの様に改善するする必要がない。
そんな感じで、採点方式以外の方法を試していくのが良いと思う。なによりも大切なことは、競争することではなく、コミュニティの為になるかどうか。スラックラインは本来は遊びであり、ライフスタイル。楽しむことが目的。勝つこと、上達することは本来の目的ではない。って事。
スラックラインのあり方について今1度考える時期にきているなぁ、と思う。
経験を活かし、本当のスラックラインを伝えられる様に気をつけて行動していきたい。
日本でも近々、6月にスラックラインリサーチフェスティバルの中で、ハイラインフリースタイルの大会が開催されます。良かったら、みんなで楽しみましょう!
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